私は小さい頃、家に遊びに行った祖母の家で、おばあちゃんが料理する姿をよく見ていました。
長ネギの一番外側の部分をむいて捨てているのを見て「なんで食べられるのに、捨てちゃうんだろう?」と思っていました。
それによくうちの母は、夕方近くになるとテレビを見ながら、夕飯で使うもやしのヒゲ根を取っていました。
「もやしを料理するのは、随分面倒だなぁ」と子供の頃に思った記憶があります。
でもこれらのひと手間は、実は意味があって行われてきた食材の下ごしらえの方法で、昔からの日本の知恵です。
このひと手間が、実は残留農薬などの有害物質を除去することにもつながっているんです。
野菜の残留農薬や有害物質を取り除く方法について、ご紹介したいと思います!
農家の人は出荷用の野菜を食べない?
「農家の人は、出荷用の野菜は食べない」という話を聞いたことはありますか?
出荷して販売するための野菜は、形や大きさ、見た目がきれいじゃないと売れないので、農薬をたくさん使って栽培されることが多いです。
そのため出荷用の野菜と、自分の家で食べるものを分けて栽培する農家さんもいる、ということなんです。
自分の家で食べる分は、無農薬や減農薬で作るということですね。
これは、農家さんがどうとかいう話ではなくて、買う側も見た目を重視して商品を選ぶ人が圧倒的に多いので、農家さんも必要で行っているんですよね。
大量に使われた農薬は、分解しきれずに、野菜にそのまま残留している可能性があります。
特にハウス栽培は、紫外線による分解力も低くなるので、残留する可能性が高くなります。
日本の農薬使用量は世界で第3位
野菜には土や雑菌、虫など、いろいろな汚れがついています。
食べる前には、よく洗ってから調理すると良いですね。
また、日本は農薬の使用量が、とても多い国です。
農薬の使用量は、たくさんある世界の国々の中で、第3位です!
もちろん国が安全だと認めた農薬しか使われていませんが、世界第3位のこの使用量の多さをどう感じますか?
一般的にスーパーなどに売られている野菜は、無農薬野菜や有機農産物の表示がなければ、ほとんどが農薬を使って栽培された野菜です。
日本は雨が多い気候だったり、害虫や病気が広がりやすいということもありますが、ヨーロッパでは禁止されている、危険な農薬が使われていることもあります。
国産の野菜だとしても、健康のためには野菜をきれいに洗ったり、農薬除去をすることが今の日本では必要なことだと考えられます。
少しでも安心な野菜を選ぶためには?
農薬にはいろいろな目的や種類があって、その毒性も様々です。
でも栽培するときに、どんな農薬をどれだけ使ったかということは、私たち買う側から見たら、なかなか分からないですよね。
農薬の影響が気になる人には、少しでも安心な生鮮食品を選ぶ方法が、いくつかあります。
旬のものを選ぶ
旬の農産物は生育も早くて、ビニールハウスでの栽培ではなく、露地栽培が多くなります。
ビニールハウスでの栽培は、農薬が紫外線によって分解、消失されにくいので、農薬の濃度が高くなったり、残留期間が長くなったりします。
そのため、旬のものを意識して選ぶというのが、残留農薬について考えたときや栄養素の高さ、そして味の良さからも、良いと言えます。
生産地や生産者で選ぶ
JAS法が改正されてから、野菜や果物には原産地表示が義務づけられました。
都道府県名で表示しますが、地名でも良いことになっています。
市町村名や、栽培者の名前が表示されていることがありますよね。
都道府県名よりも、もっと詳しい市町村名や地名で書かれているのを選ぶ、さらには生産者が明らかになっているものを選ぶ、という方法があります。
地場産品なら、生産者の顔写真が印刷や掲示されていることもあります。
そのような野菜や果物は、いつ検査されても大丈夫だということを意味しているとも言えるので、より信頼できる農産品だと考えることができます。
例えば、生産者や栽培方法、使用している農薬の種類や回数などが明らかになっている、信頼できるところから、食材宅配サービスや産地直送のネット通販で購入する、ということもできますね。
有機JASマークのものを選ぶ
安心な野菜を選ぶためには、オーガニックな有機農産物に認定されている野菜を選ぶ、という方法もあります。
有機JAS規格という法律に基づいて登録認定機関の審査を受け、「有機JAS認証」を取得した生産者だけが、有機JASマークをつけることができます。
有機農産物を見分けるには、「有機JASマーク」がついているかで判断できます。
有機JASマークをつけるためには、たくさんの規定をクリアする必要があります。
例えば、次のような規定があります。
・種まきや植え付けの、2年以上前から、許容された農薬と化学肥料を使っていない田んぼや畑で栽培する
・化学的に合成された肥料や農薬を使用しない
・遺伝子組み換え技術を使用しない
・許容された資材(防虫ネットなど)以外は使用しない
これらをはじめ、健康や環境への負荷をできる限り減らすための、細かい規定がたくさんあります。
その規定をクリアした農産物だけが「有機JASマーク」をパッケージにつけて、有機農産物や有機野菜と表示して販売することができます。
この認定には申請費用や有機JASマークのシールなど、いろいろな手間や費用もかかるため、無農薬で栽培していても、審査を受けていない農家さんもいます。
でも、私たちが安心な農作物を選ぶ上で、分かりやすい判断方法になります。
下ごしらえで農薬を除去する
有機農産物や無農薬野菜を買えれば、もちろん安心ですよね。
でもそのような野菜は、栽培に手間暇がかかっていることもあって、ほとんどの場合、価格が少し高くなります。
そんな時には、ちょっとしたひと手間や下ごしらえで、野菜の残留農薬を減らすことができます。
例えば、私の母がよくやっていた、もやしのヒゲ根取りも、そのちょっとしたひと手間になります。
もやしは栽培するときに使われた薬品が根から吸収されて、ヒゲ根に残留することが多い野菜です。
そのため、そのヒゲ根部分を取り除くことで、農薬の影響を減らすことができます。
私のおばあちゃんがやっていた、長ネギの外側を1枚むく方法も、農薬がついていることが多い外側の部分を取り除くことで、農薬を除去するやり方です。
次から、農薬などの有害物質を除去するのに効果的な、食材の下ごしらえの方法をご紹介します。
是非、参考にしてみてくださいね!
野菜をよく洗う
野菜に残っていた土には、薬剤が残っていることがあります。
土はしっかりと落とすようにしましょう。
葉物野菜の場合、葉と葉が重なり合っている根元の部分に、土や汚れが残っていることがあります。
根の部分に流水をしっかりと当てて、細かい土や汚れも取り除きます。
流水だけでは、根元の部分が、きれいに取り除けないことがあります。
そんな時には、一枚ずつ葉をはがして取り、よく洗います。
ボールに食用の重曹を大さじ1杯ほど溶かした水に、30秒くらい野菜をつけてから、流水で洗い流す重曹洗いも、汚れや農薬が落ちやすくなるので効果的です。
長く重曹水につけると、栄養素まで流れ出てしまうので、長くつけすぎないようにします。
皮をスポンジで洗う・板ずりする
ジャガイモやサツマイモ、山芋、人参、大根、レンコンなどは、スポンジで洗うと、手で洗うよりも皮の表面についた農薬をきれいに落とすことができます。
野菜洗い専用のスポンジがあると良いですね。
ゴボウや里芋などは、たわしで洗います。
また、オクラやキュウリ、フキなどは、塩で板ずりをします。
板ずりとは流水で洗った後に、まな板に野菜を置いて塩を振り、手の平で転がすようにして、まな板に野菜をこすりつける方法です。
塩の働きで農薬や、あくが外に出やすくなります。
外側の葉を取り除く・皮をむく
キャベツやレタスなどの丸い形になる葉物野菜は、一番外側の葉を取り除きます。
一番外側の葉が、一番農薬が残っている可能性が高いので、取り除くことで農薬も除去することができます。
農薬の殺菌剤の成分は、野菜の表面に残留していることが多いので、洗ったり皮をむくことで取り除くことができます。
それに対して、殺虫剤やダイオキシンは、表面から少し入った、野菜のクチクラ層というところに残留しています。
皮がある野菜は皮をむくことで、皮の表面に残った殺菌剤や、皮のすぐ下のクチクラ層に入り込んだ殺虫剤などの農薬を、取り除くことができます。
また、化学肥料の影響の硝酸塩は、野菜の内部に残留しています。
湯むきする
トマトは、皮に切れ目を入れて、熱湯にさっと入れて、すぐに冷水で冷やす、湯むきをすることで、皮がつるんときれいにむけます。
農薬の殺菌剤は表面に残留していますが、殺虫剤の成分は皮の表面から少し入ったクチクラ層に残留することが多い成分です。
湯むきすることで、殺菌剤や殺虫剤の残留部分をきれいに取り除くことができます。
水にさらす・あく抜き・あくをとる
野菜のあくの成分は、水に溶けやすい性質があります。
水にさらしたり、酢水につけたりすることで、渋みやえぐみなどのあくの成分が抜けます。
あくを抜くことは、残留農薬や化学肥料による硝酸塩、ダイオキシンなどを減らすことにもなります。
長い時間水にさらしていると、栄養分まで溶け出してしまいます。
5~10分ほどでも、有害物質は溶け出して減らすことができるので、さらす時間が長くなりすぎないようにしましょう。
酢水の場合はそのままの酢よりも、水で1/2に薄めた酢水の方が、有害物質を引き出す働きが強くなります。
そのため酢の物なら、一度薄めた酢水につけてから、その酢水は捨てて、改めて酢の物を作ります。
また、食材をゆでたり煮たりしているときに、あくの泡が出てきますよね。
これもきれいに取り除くことで、一緒に残留農薬や不要な不純物も取り除くことができます。
ゆでこぼす
ゆでこぼしとは、野菜をゆでてそのゆでた汁を捨てることです。
あくや渋みのあくをとることができますし、里芋などはぬめりをとるために行います。
味の良くない成分や、不要なぬめりなどを取る目的がありますが、有害物質を減らすことにも役立ちます。
食材を切ってからゆでこぼした方が、内部に入り込んだ農薬が溶け出しやすくなるので、農薬除去の面から見ると、より効果的です。
切り方を工夫する・隠し包丁を入れる
野菜を細かく切ることで、内部に入り込んだ有害物質が溶け出す面積が大きくなります。
千切りや、細く切った白髪ネギ、ごぼうなどのささがき(ごぼうを回しながら、そぎ切ること)などは、有害物質を取り除く、効果的な切り方です。
きゅうりの蛇腹切りや、なすに縦に切り込みを入れた茶筅切り、かぼちゃの皮をところどころむいた、かすりむきなど、日本には昔からの知恵で、様々な切り方があります。
それらの切り方を取り入れて切った後に、水にさらしたり、ゆでこぼすことも有効な方法です。
また、食材に切り込みを入れる、隠し包丁という方法があります。
大根や芋類に、十字などに切り込みを入れることで、火の通りを良くしたり、味が染み込みやすくなります。
この隠し包丁を入れることで、内部の残留農薬が溶け出しやすくなるので、これも有害物質を減らす、効果のある方法です。
まとめ
野菜の農薬除去に役立つ、様々な方法についてご紹介しました。
昔から日本人が料理のときに行ってきた、下ごしらえの方法が、実は農薬大国になった今の日本では、有効な農薬除去の方法にもなります。
毎回料理をするたびに、全ての野菜をこのような下ごしらえをするのは大変という人もいますよね。
そういう方は、頭にだけ入れておいて、できそうな時だけやってみるとか、心配な野菜のときだけやる、というのでも良いと思います。
野菜の農薬が気になるという人は、下ごしらえにストレスを感じすぎずに、自分ができるところや、気になったところから取り入れてみてくださいね!
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